ロゴマークデザイン。 カラー指定のやり方、 ロゴマニュアルについて。

ロゴマーク。カラー指定のやり方とロゴマニュアルについて。

本日は、ロゴマーク、シンボルマーク制作の最終段階。データ納品時に作る、ロゴマニュアルについてお話させて頂きたいと思います。

まず、ロゴマークやシンボルマークは、企業、商品、グループ、イベントなど、様々な分野のブランディングに利用されています。そのイメージを共通化するために、ロゴ・シンボルマークの使用にルールを作る必要があります。

有名ブランドや一流の企業は大抵、ロゴ・シンボルマークについてのマニュアルを作っています。

マニュアルは、数十頁にもおよぶものもあり、広報のあらゆる場面で、ロゴ・シンボルマークの使用について細かな決まり事があります。

ロゴの位置、ロゴの背景が入る場合のルール、ロゴの大きさ、使用する書体、カラー、キャッチフレーズ、場合によってはポスター等のレイアウトの細部に至るまで、詳細に決めていきます。

ここまでルールを定めるのには理由があります。大企業や有名ブランドにいたっては、広報に使用される媒体も様々で、全世界で数多く展開されます。その際、各店舗が自由にロゴ・シンボルマークの色や形、入れ方などを決めてしまうと、ブランドのイメージに統一感が無くなり、ブランドイメージが損なわれる場合があります。

ロゴ・シンボルマークマニュアルは企業のブランディングには欠かせないツールなのです。

一般企業で、ここまでのマニュアルを作成する事はありませんし、必要もないと思いますが、ある程度は必要です。ロゴマーク・シンボルマークは“企業の顔”です。見た度に顔が違う人では、誰だかわからなくなってしまいますからね。

ロゴマニュアルの色指定作業

今回、新店舗オープンをされるお客様から、ロゴ制作の依頼を頂いており、カラー指定の作業を行っていましたので、折角なので制作作業のご説明もしたいと思います。

色指定中

ロゴマーク制作の段階では、お客様の求めるイメージや希望を、出来る限り取り入れた状態で、コアターゲット層にも好感の持たれるデザインであり、見た人の印象に残り、デザイン的にバランスの取れたものを作る必要があります。

お客様の好みやターゲット層の事を意識し、デザインコンセプトを考え、イメージに合う書体やデザイン要素を入れるなど、試行錯誤して作ります。仕上げの段階ではブラッシュアップによりクオリティを上げていく作業も必要です。時間は多少かかりますが、こうやってお客様とイメージをすり合わせながら仕上げて、色のイメージもお客様と共通の認識で固めていきます。

ここまでに、できるだけすり合わせを行って置くことが非常に重要です。

お客様としては、ここで手離れとなりますが、グラフィックデザイナーはこの後、一仕事残っています。これが結構重要な作業になります。

ロゴマニュアルを作成する

デザインやカラーイメージも固まった状態ですが、実際に最終的なお客様(エンドユーザー)が目にするイメージも、同じ印象になっていなければ、ブランディングとして完全とは言えません。特に、色のイメージは、最終的に見る人が、目にする“メディア(様々な媒体等)”により微妙に違って見えている。という事を理解しておく必要があります。今見ているモニターの画面、印刷物の色、看板となった時の色、ホームページ上での色、等々。どうしても完璧に同じに色味にすることは至難の業ですが、ある程度近づけることなら可能です。これには、ロゴマニュアルが不可欠になります。

ロゴマニュアルには、

  • フルカラーのデザイン
    印刷物やWebサイトなどで使用する完全なデザイン。グラデーションや影、立体なども可能。
  • モノクロ(単色)のデザイン
    モノクロ印刷(白黒)やカッティングシート、バッチや看板などで、1色しか色を使わない場合のデザイン。
  • グレースケールのデザイン
    モノクロ印刷(グレートーン)で使用するモノトーンのデザイン。
  • 特色指示された場合のデザイン
    特殊印刷(DICカラー指定が必要)を使用する印刷や看板等でも使用するデザイン。

これらを、すべて入れた、デザインデータをマニュアルとして作成します。

また、色の指定方法は、

  • CMYKで指定する、プロセスカラー印刷(通常4色印刷と呼ぶ場合もあります)
  • 特色指定する、特色印刷(DICカラーガイドで指定する特色指定)

この二種類はマニュアルに記載しておく必要があります。

DICカラーガイド

DICカラーガイド

DICカラーガイドという、色見本のカラーチップが必要です。このカラーチップは、日本全国の印刷会社から、看板屋、デザイン事務所など、様々な業者が利用しているもので、このチップ番号を指定することで、全てのクリエイターがロゴの色を共通認識することができます。また、カラーチップの色は、通常の印刷のように4色掛け合わせて表現するものでなく、インキそのものの色を指定する事になります。実際は、毎回複数のインクを配合し、逐一DIC番号の色のインクを作る事になります。※毎回作るため、時々色味がずれることもあります。

特色では、普通の色だけでなく、ゴールドやシルバー、蛍光色など、通常の4色印刷では表現不可能な印刷表現が可能です。また、色の発色も良く、名刺やデザイン書、パンフレット等の冊子表紙など、クオリティを求められる印刷に利用されます。そのため、通常の印刷より多少費用がかかります。ネット印刷では、この印刷を行わない所がほとんどです。

カラーチャート

カラーチャート

カラーチャートは、プロセスカラー(4色印刷)の掛け合わせの色見本帳です。チャートには10%刻みで、ほとんどの色の組み合わせの色を、実際に印刷された色で確認する事が出来ます。実際にプロセスカラー印刷されたものですので、実際の印刷に近い色で確認できます。4色印刷とは、「C シアン」「M マゼンタ」「Y イエロー」「K ブラック」の4色の色をかけ合わせて、あらゆる色を表現する印刷です。※実際の印刷の場合、見本帳と全く同じとはなりません。多少の色味のズレは了承してもらっておく必要があります。

色指定の方法

まず、お客様と共通認識のカラーがあります。このカラーに最も近いイメージの色を“DICカラーガイド”から選び出します。沢山の色がありますので、その中からイメージに近い色を見つけ出す必要があります。

次に、そのDICと同じ色を、カラーチャートから見つけ出します。カラーチップを見ながら、カラーチャートで色を探し出します。この時、完成のイメージは、お客様と一緒にデザインの確認していたもの(最終のプリントアウトや最終デザインをモニターに表示されたもの)を、見ながら選ぶと良いでしょう。

デザイン作成時には、Illustratorで作成したロゴデータに、CMYKで実際に色を付けていると思います。このCMYKの数値は、あくまでも作成時の環境で使用していたモニターに由来するものです。この数値通りの色指定で、そのまま印刷した場合、お客様と共に認識していたカラーイメージと、実際の印刷物のカラーイメージにズレが生じてしまう可能性があります。

そこで、カラーチャートやDICのカラー指定でロゴの色を決めてしまう作業が必要になります。

しかし、そう簡単ではありません。例えば、DICで選んだブルーとCMYKで作ったブルーでは、どんなに頑張っても全く同じ色には、なりにくく、あくまでもデザイナーの印象を元に、デザイナーの感覚でカラーを決定します。この“決定する”事に意味があり、多少の色のズレは致し方ありません。

マニュアルにより、色のルールが決められている事が重要で、このルールに従えば、全てのロゴは基本的に、ほぼ同じ色になる事になります。

ロゴマークのデザインを受注した場合、最低でも、こういったロゴマニュアル的な物を作成し、納品する必要があります。こういった作業にかかる技術料も付加して、デザイン料金を設定しておきましょう。

ロゴマニュアル作成は、デザイナーの基本です。

マニュアル自体も、美しくレイアウトしておくと良いでしょう。

こういった所でもデザイナーの質を見られます。

ロゴ・シンボルマークを外注される側の方も、この事を知っておく事は重要です。自社のブランディングを適当にされてしまっては、将来的に不具合が生じるかもしれません。もし、知識の無い業者に依頼した後であれば、教えてあげる必要があります。デザイン自体は良いものを作っていただけているのであれば、マニュアルは、ただの納品方法のようなものですので、ちゃんと説明すれば、大抵の業者の方は作ってくれると思います。

今回はマニュアル作成の話でしたが、皆様の今後のお仕事にお役に立てれば幸いです。

編集後記

今回は、丁度ロゴマニュアル作成の作業をしていたので、それを記事にしてみました。最近ではクラウドソーシングなど、デザイナーでない人でも、ロゴの仕事を受けてくれる仕組みがあります。こういった事をあまりやってこなかったデザイナーもいます。これは、デザイナーが知識がなかったというよりも、仕事内容による所が大きいと思います。例えば、求人広告制作を中心に作業されていた方や、冊子などエディトリアルのレイアウト中心の作業をされていた方、新聞広告などの広告やチラシ制作などを中心にされていた方など、1つの仕事をメインに行っていると、ロゴ制作などを単品で仕事をする機会が少なくなります。デザイン力がある方であれば、納品に詳しい指示をすれば、十分対応出来るはずですので、基本的には依頼者が、マニュアルを作ってくれと依頼する必要があるのかもしれませんね。

良いブランディングは、企業のPRに欠かせないものです。総合的なマニュアル制作もされると良いかもしれませんね。

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